AIに指示を出すとき、「かっこいい文章で書いて」「親しみやすいトーンで」といった抽象的な言葉を使っていませんか? そして、出てきた結果に「なんか違うんだよな…」とガッカリしていませんか?

それは、あなたの指示が悪いのではありません。「例」が足りない のです。 今回は、プロンプトエンジニアリングの基本にして奥義、「Few-Shotプロンプティング」 を解説します。

Few-Shotプロンプティングとは?

簡単に言えば、「例題(Shot)をいくつか(Few)見せて、パターンを学習させる」 手法です。

  • Zero-Shot: 例なし。「この商品を宣伝して」
  • One-Shot: 例1つ。「以下の例のように宣伝して。例:〜」
  • Few-Shot: 例複数。「以下の例にならって宣伝して。例1:〜、例2:〜、例3:〜」

AIは文脈を理解する能力(In-context Learning)が高いため、例を見せるだけで、その法則性やトーンを瞬時に模倣します。

具体例:キャッチコピー生成

例えば、高級時計のキャッチコピーを作らせたいとします。

悪い例(Zero-Shot):

高級時計のキャッチコピーを考えて。高級感があって、短くて、心に響くやつ。

→ 出力:「時を刻む、永遠の輝き。」(ありがちでつまらない)

良い例(Few-Shot):

以下の例のようなトーンで、高級時計のキャッチコピーを考えてください。

例1:
商品:スポーツカー
コピー:一瞬で、過去にする。

例2:
商品:ブラックコーヒー
コピー:飾らない、という贅沢。

例3:
商品:一眼レフカメラ
コピー:記憶より、鮮明に。

課題:
商品:高級時計
コピー:

→ 出力:「秒針の音さえ、品格になる。」

いかがでしょうか? 「体言止め」「読点のリズム」「抽象的な価値の提示」といった法則をAIが勝手に読み取り、それっぽいコピーを出力してくれます。

文体模倣にも使える

自分の過去のツイートやブログ記事を3〜5つほど例として与え、「この人の文体で、以下のテーマについて書いて」と指示すれば、驚くほど自分らしい文章が生成されます。

「AIっぽい文章」を脱却する一番の近道は、「自分っぽい文章」を例として読ませること なのです。

まとめ

  • 言葉で説明するより、例を見せるほうが早い。
  • 3つ以上の例(Shot)を与えると精度が安定する。
  • 自分の文章を例にすれば、文体模倣も可能。

「指示する」のではなく「やってみせる」。 山本五十六の名言ではありませんが、AIに対してもこれが教育の基本です。