AIに数学の問題や、複雑なロジックが必要な質問をすると、自信満々で間違った答えを返すことがあります。 これは、AIが「直感的に(確率的に)」答えを出そうとしてしまうからです。
これを防ぎ、AIの論理的思考能力を飛躍的に高める魔法の言葉があります。 それが 「ステップバイステップで考えてください(Let’s think step by step)」 です。
この手法は Chain of Thought (CoT: 思考の連鎖) と呼ばれます。
なぜ「段階的に考える」と賢くなるのか?
人間も同じです。 「23 × 45 は?」といきなり聞かれたら間違えるかもしれませんが、 「まず 20 × 45 を計算して、次に 3 × 45 を計算して、足し合わせよう」と考えれば正解できます。
AIも同様に、「いきなり答えを出さず、中間の思考過程を出力させる」 ことで、計算ミスや論理の飛躍を防ぐことができるのです。
具体例:ミステリーのトリック作成
例えば、ミステリー小説のトリックを考えさせるとします。
悪い例:
密室殺人のトリックを考えて。
→ 出力:ありきたりなトリックや、物理的に不可能なトリックが出がち。
良い例(CoT):
密室殺人のトリックを考えます。以下の手順で段階的に思考してください。
1. 部屋の状況(ドア、窓、鍵の状態)を定義する
2. 犯人が出入りした方法ではなく、鍵をかけた方法を検討する
3. 物理的な糸や針金を使ったトリックの可能性を探る
4. 心理的な盲点(実は鍵がかかっていなかった等)の可能性を探る
5. 最も意外性があり、かつ実行可能なトリックを選定し、詳細を記述する
このように思考のステップをガイドすることで、AIは論理を積み上げ、整合性の取れた高品質なアイデアを出力してくれます。
応用:Zero-Shot CoT
例を与えずに、単に**「ステップバイステップで考えて」** と付け加えるだけでも効果があります(Zero-Shot CoT)。 プロンプトの最後にこの一言を添えるだけで、回答の精度が上がるなら、やらない手はありません。
まとめ
- AIは直感で答えようとして間違えることがある。
- 「ステップバイステップで考えて」と指示すると、論理的思考モードになる。
- 複雑なタスクは、手順を分解して与えることで精度が上がる。
AIに「考えさせる」時間をあげる。 それだけで、あなたのAIアシスタントは一気に賢くなります。