「AIで書いた小説をコンテストに出してもいいの?」 「AIが生成した文章の著作権は誰にあるの?」
AI執筆を始めると、必ずこの壁にぶつかります。技術的には可能でも、「権利」と「倫理」 の問題は別物だからです。
この記事では、現時点(2025年)での法的な解釈と、法律以上に重要となる「創作者としての倫理観」について解説します。
1. 著作権法の現在地(2025年版)
まず、日本の著作権法における基本的な解釈を押さえておきましょう。 ※本記事は法的な助言ではありません。個別の事案については専門家にご相談ください。
AI学習は「原則OK」
日本では、著作権法第30条の4により、AIの学習(情報解析)のための著作物利用は、原則として著作権者の許諾なく行えるとされています。つまり、AIが既存の作品を読んで勉強すること自体は合法です。
生成物は「依拠性」と「類似性」で判断
問題は「生成されたもの」です。著作権侵害となるには、以下の2点が必要です。
- 類似性:既存の作品と似ていること
- 依拠性:既存の作品を知っていて、それに依拠して作ったこと
AIが偶然似てしまった場合は「依拠性」がないとされる可能性がありますが、特定の作品をプロンプトで指定して似せた場合は、侵害となるリスクが高まります。
AI生成物に著作権は発生するか?
現状の通説では、「AIが自律的に生成したもの」には著作権が発生しません。 しかし、人間がプロンプトを工夫し、何度も修正を加え、「創作的寄与」 が認められる場合は、人間に著作権が発生する可能性があります。
つまり、「ボタン一つでポン」で作ったものには権利がなく、あなたが汗をかいて作り上げたものには権利が宿る ということです。
2. 法律よりも厳しい「倫理ライン」
法律でセーフなら何をしてもいいのでしょうか? AI Writing Labでは、そうは考えません。読者やコミュニティからの信頼を失えば、クリエイターとしての死を意味するからです。
「AI使用」を明記すべきか?
これには議論がありますが、当ラボでは以下の基準を推奨しています。
- AI自動生成型(Full Auto):明記すべき。「AIとの共作」あるいは「AI生成」と書くのが誠実です。
- AI共同執筆型(Collaboration):ケースバイケース。物語の核を人間が担っているなら必須ではないが、後書きなどで触れるのがスマート。
- AI補助型(Assistant):明記不要。校正ツールを使ったことをわざわざ書かないのと同じです。
「パクリ」と言われないために
特定の作家の文体を模倣するプロンプト(例:「村上春樹風に書いて」)は、私的利用に留めるべきです。それを公開して収益化することは、法的にグレーであるだけでなく、クリエイターとしての品格を疑われます。
3. 「自分の作品」と胸を張るために
結局のところ、どこからが「自分の作品」なのでしょうか?
私は、「その作品の全責任を負えるか」 が境界線だと考えています。
AIが書いた文章の中に、差別的な表現や事実誤認があったとします。それを「AIが勝手に書いたから」と言い訳するなら、それはあなたの作品ではありません。 一字一句に目を通し、「これは私が世に出す言葉だ」と責任を持てるなら、それはAIを使っていようと、紛れもなく 「あなたの作品」 です。
まとめ
- 法的には「依拠性」と「類似性」に注意。
- AI生成物に著作権が発生するかは「創作的寄与」次第。
- 法律以上に「信頼」を守るための倫理観が重要。
- 最終的な責任を持てるかどうかが、「自分の作品」の境界線。
AIは強力なツールですが、それを使う「人間」のモラルがこれまで以上に問われています。 胸を張って「これは私の作品です」と言えるものを作りましょう。